2018年問21~25【コンクリート診断士】
問21:初期欠陥
写真(1)~(4)に示す鉄筋コンクリート構造物の変状のうち、コンクリートの打ち込みに起因するものとして、不適当なものはどれか。
正答:2
写真より変状の原因を推定する問題です、頻出します。
(1) 型枠下部に発生しており、粗骨材が露出しているため、豆板であると判断できます。
(2) 開口部角部から斜めに伸びるひび割れは、乾燥収縮によるひび割れであることが多く、打ち込みに起因するものではありません。
(3) 水平方向に生じる不連続面であり、コールドジョイントと判断できます。
(4) コンクリート表面に発生する空隙であり、表面気泡であると判断できます。
問22:初期欠陥
道路橋の鉄筋コンクリート橋台の躯体コンクリートを打ち込んで数日後に、下図に示すひび割れが発生した。ひび割れの発生原因、主となる高速条件とひび割れを通じた橋台背面からの漏水の可能性に関する、次の(1)~(4)の組み合わせのうち、適当なものはどれか。
正答:3
初期に発生するひび割れの多くは乾燥収縮および水和熱に起因します。大まかな見分け方として「部材厚が小さい→乾燥収縮」「部材厚が大きい→水和熱」と考えます。 本問題は部材厚が1.5mと大きいため、水和熱が妥当と判断できます。
ひび割れは躯体下部から上方に伸びています。自由に収縮ができる躯体上部にひび割れが生じず、フーチングがコンクリートの収縮を拘束する下部では縦方向のひび割れが生じます。また、水和熱によるひび割れは部材を貫通することが多く、漏水の可能性が高いと言えます。
問23:中性化
建設後36年が経過した打放し仕上げの鉄筋コンクリート造建築物において、屋外側の壁面の雨掛かりのある部位を調査したところ、中性化深さは30mm、中性化残り(かぶり(厚さ)と中性化深さの差)は0mmであった。この調査結果に関する記述(A)~(C)の適・不適の組合せとして、次の(1)~(4)のうち、適当なものはどれか。
(A) 調査部位の中性化速度係数は、5mm/√年 と推定した
(B) 調査部位の鉄筋は腐食していないものと判断した。
(C) 調査部位と同一壁面の雨掛かりの無い部位の中性化深さは、30mmより小さいと判断した。
正答:1
コンクリート中性化深さを評価する指標として√t則が挙げられます。
ここに、
d : 中性化深さ(mm)
α : 中性化速度係数(mm/√年)
t : 経過年数(年)
建設後36年時に中性化深さ30mmであるため、
30 = α × √36 → α = 30 / √36 = 5(mm/√年) となります。
(A) 中性化速度係数α = 5(mm/√年)より、正しい。
(B) 中性化深さが鉄筋位置まで達していることから、鉄筋の腐食が開始しているものと判断できる。よって、不適。
(C) 雨掛かりのない部材が中性化速度が遅いため、中性化深さはより進行していると判断できる。よって、不適。
中性化の原因となる炭酸ガス(二酸化炭素)はコンクリートの細孔を通じて内部に侵入します。このため、コンクリート細孔が水で満たされている場合には中性化速度は遅くなり、一般的にコンクリートの含水率が3%以上で顕著に遅くなるとされています。
問24:アルカリシリカ反応
温暖な内陸部にある鉄筋コンクリート構造物において、写真1に示すようなアルカリシリカ反応による変状が発生していた。写真1の部位Ⅱで、はつり調査を行ったところ、写真2に示すように鉄筋の曲げ加工部で破断が認められた。
この調査結果に関する、次の記述中の(A)および(B)に当てはまる(1)~(4)の語句の組み合わせのうち、適当なものはどれか。
変状の発生状況が部位Ⅰと部位Ⅱで異なる主な要因は、水分(雨水)の供給量の違いによると考えられ、部位Ⅱから得られるコンクリートコアの残存膨張性は、部位Ⅰより ( A ) と推定される。また、部位Ⅱで見られた鉄筋破断は、曲げ加工の際の曲げ戻しにより、曲げ加工部 ( B ) に初期亀裂が発生し、アルカリシリカ反応によるコンクリートの膨張により亀裂が進展したためと考えられる。
正答:4
写真等より変状機構を推定する問題です。
アルカリシリカ反応は①水②アルカリ③反応性骨材の存在下において発生するため、雨掛かりのある部材がより進行します。また、コンクリートの膨張により曲げ加工部内側が破断します。この現象の原因を問う問題は何度か出題されており、「曲げ加工部の破断 = アルカリシリカ反応」との認識でもよいと思われます。
問25:変状機構の推定
九州地方の山間部(標高約800m)にある建設後約60年を経過した鉄筋コンクリート造建築物において、写真に示すような変状が生じていた。この変状の主たる原因として、次の(1)~(4)のうち、適当なものはどれか。
(1) コンクリートの乾燥収縮
(2) 塩害
(3) 中性化
(4) 凍結融解作用
正答:4
写真等より変状機構を推定する問題です。変状は不規則な微細ひび割れが躯体上部に現れており、ひびわれは白色を呈しています。
(1) 写真のみでは判断不可。
(2) 塩害であれば鉄筋に沿ったひび割れや錆汁が確認されるため、不適。
(3) 中性化のみであれば変状は顕在化せず、中性化に伴う塩害が生じていれば、(2)と同様になり、いずれであっても不適。
(4) 微細なひび割れであり、問題文より標高の高い山間部であるため発生環境としても適している。
問題文中で「九州地方の山間部(標高約800m)にある」と明記されており、明らかに凍害を示唆しているように見えます。コンクリート診断士試験ではこのような傾向があり、過去問題を多く解き、その雰囲気(?)をつかめるようになることが得点に繋がると思われます。
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