予防保全型メンテナンス

 予防保全メンテナンスとは、橋梁、トンネル、道路、河川管理施設、上下水道などの社会インフラについて、損傷が深刻化する前に点検・診断を行い、劣化が軽微な段階で補修することで、施設の長寿命化と維持管理費の縮減を図る考え方です。国土交通省は、施設に不具合が生じてから対応する「事後保全」から、早い段階で対策を行う「予防保全」への転換を進めています。

 背景には、高度経済成長期以降に整備されたインフラの老朽化が進み、今後、建設から50年以上経過する施設が増加することがあります。一方、インフラの維持管理を担う技術者や自治体の財源には限りがあります。損傷が深刻化してから大規模な修繕や更新を行う方法では、費用が増大するだけでなく、通行止めや施設の利用停止など、社会生活への影響も大きくなる可能性があります。そのため、計画的に点検・補修を行い、将来の費用や作業負担を抑えることが重要になっています。

 具体的には、定期点検によって施設の状態を把握し、劣化や損傷の程度を診断したうえで、必要な補修・補強を行います。その結果を記録して次回の点検や修繕計画に反映させます。このように「点検・診断・措置・記録」を繰り返す仕組みを、メンテナンスサイクルといいます。また、個々の施設について、点検結果や将来の更新時期、費用などを踏まえた長寿命化計画を策定し、計画的な維持管理を進めます。

 例えば、橋梁で小さなひび割れや塗装の劣化が確認された場合、早い段階で補修や塗り替えを行えば、劣化の進行を抑えられる可能性があります。一方、損傷を放置してコンクリートの剥落や鉄筋の腐食などが進むと、大規模な補修や部材の交換が必要になる場合があります。予防保全は、このような損傷の深刻化を防ぎ、施設をできるだけ長く安全に使うための取組です。

 主なメリットは、維持管理・更新にかかる長期的な総費用を縮減できる可能性があること、修繕費用が特定の時期に集中するのを抑えられること、施設の安全性や信頼性を維持しやすくなることです。国土交通省の過去の推計では、同省所管のインフラについて、事後保全を続けた場合と比べ、予防保全に転換することで、今後30年間の維持管理・更新費用の累計を約3割縮減できる見込みが示されました。ただし、これは一定の条件に基づく推計であり、すべての施設で同じ割合の削減が保証されるわけではありません。

 一方で、予防保全を実効性のあるものにするには、定期的な点検や劣化診断、補修履歴の蓄積、長期的な予算の確保が必要です。特に地方公共団体では、技術職員や財源の不足が課題となるため、ドローンやセンサー、AIなどの新技術を活用した点検の効率化や、複数の施設をまとめて管理する広域的な取組も重要です。国土交通省は、新技術の導入や官民連携などを通じて、持続可能なインフラメンテナンスを目指しています。

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