堀越事件 (最判平24.12.7)

事案

 社会保険庁に勤務していた国家公務員が、特定政党支持のために正党機関紙を配布した行為が、国家公務員法110条1項19条・102条1項、人事院規則14-7に違反するとして起訴された。このため、国家公務員法及び人事院規則の罰則規定が合憲か否かが争われた。

結論

 罰則規定は合憲、本件配布行為は当該罰則規定の構成要件に該当しない。

判旨

【一 国家公務員法102条1項にいう「政治的行為」の意義】
 国家公務員法102条1項の「政治的行為」とは、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが、観念的なものにとどまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められる政治的行為をいう。

【二 人事院規則14−7第6項7号、13号に掲げる政治的行為の意義】
 人事院規則14−7第6項7号、13号に掲げる政治的行為は、それぞれが定める行為類型に文言上該当する行為であって、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものをいう。

【三 国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの)110条1項19号、国家公務員法102条1項、人事院規則14−7第6項7号、13号による政党の機関紙の配布及び政治的目的を有する文書の配布の禁止と憲法21条1項、31条】
 国家公務員法(平成19年法律第108号による改正前のもの)110条1項19号、国家公務員法102条1項、人事院規則14−7第6項7号、13号による政党の機関紙の配布及び政治的目的を有する文書の配布の禁止は、憲法21条1項、31条に違反しない。

【四 国家公務員法102条1項、人事院規則14−7第6項7号、13号により禁止された政党の機関紙の配布及び政治的目的を有する文書の配布に当たらないとされた事例】
 管理職的地位になく、その職務の内容や権限に裁量の余地のない一般職国家公務員が、職務と全く無関係に、公務員により組織される団体の活動としての性格を有さず、公務員による行為と認識し得る態様によることなく行った本件の政党の機関紙及び政治的目的を有する文書の配布は、公務員の職務の遂行の政治的中立性を損なうおそれが実質的に認められるものとはいえず、国家公務員法102条1項、人事院規則14−7第6項7号、13号により禁止された行為に当たらない。
(1〜4につき補足意見、1、2、4につき意見がある。)

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