2019年問1~5【コンクリート診断士】
問1
脱型直後のRCボックスカルバートのウイングに、写真に示すような変状が認められた。変状の発生要因に関する次の記述(A)~(C)の適・不適の組み合わせとして、(1)~(4)のうち、適当なものはどれか。
正答:1
写真より変状の原因を推察する問題です。写真に示される変状は水平方向に伸びるひび割れ(不連続面)です。また、脱型直後に確認されたことが明記されています。以上よりコールドジョイントであると推察されます。
コールドジョイントの発生原因として「打重ね時間間隔が長い」「内部振動機の挿入深さが浅い」は適切です。対し、自由落下高さが低いことは材料分離が生じにくくなることから、不適切と判断されます。
問2
次の(1)~(4)の図に示すRC構造物に発生したひび割れのうち、温度変化を主因として発生したものとは考えられないものはどれか。
正答:4
図より、変状の原因を推察する問題です。
(1) 煙突の筒体に鉛直方向に発生するひび割れです。排煙装置稼働時に高温となることで膨張・収縮が生じることから、温度変化によるひび割れが生じます。
(2) 建築物の角部に斜めに生じるひび割れです。日射による温度変化を最も受けやすい角部の膨張により、角部と内側の境界にひび割れが生じます。
(3) 擁壁の壁体に、鉛直方向かつ一定間隔に生じるひび割れです。先に打設された床版コンクリートに収縮を拘束されることで、収縮が自由に行われる上部と対象的に壁体下部に鉛直方向のひび割れが生じます。
(4) 壁厚0.2mと薄い高欄に、鉛直方向かつ一定間隔に生じるひび割れです。部材が薄いため、生じるひび割れは温度応力より乾燥収縮が支配的となります。従って、本選択肢が不適切です。
(1)について、煙突が対象となる出題としては「温度変化」または「化学的浸食」のいずれかが主となります。単純なひび割れのみが示される場合は「温度変化」、コンクリートの表面写真等によって浸食の状況が示される場合は「化学的浸食」と、おおまかな判断が可能です。
(2)について、温度変化によって生じる特徴的なひび割れであり、この形状のひび割れ=温度変化が原因と覚えて問題ありません。頻出問題であり、記述式にも出題されます。
(3)および(4)におけるひび割れについて、コンクリート診断士試験においては「厚い部材は温度変化、薄い部材は乾燥収縮が原因」と考えて差し支えありません(なかなかワンパターンな出題傾向を示します)。
問3
脱型直後のコンクリート表面が写真に示すように青緑色を呈していた。青緑色を生じた理由に関する次の記述中の(A)~(C)に当てはまる(1)~(4)の語句の組合せのうち、適当なものはどれか。
この呈色は、( A )を使用したコンクリートの脱型直後にみられる現象である。( A )は( B )雰囲気下で製造されるため、( A )に含まれるFeやMnは酸化数が小さい状態で存在する。そして( A )が含有する( C )に起因して( B )状態が維持され、( C )とFeやMnが反応するため青緑色となる。この色は空気中に曝されると短時間で薄くなり、強度や耐久性への影響は小さい。なお、コンクリートから採取したコアの表面に同様の呈色が認められることもある。
正答:1
高炉セメントや高炉スラグ微粉末を用いたコンクリートにおいて、脱型直後に表面が青緑色を呈することがあります。高炉スラグの水和によって生じたHS–やS2-によって反応領域が還元性雰囲気となることで、FeやMnなど酸化数が低い状態で他の水和物に固溶するために発色します。なお、大気中に曝されることでFeやMnの酸化数が増加し、次第にその色は消失します。
問4
単純支持された(A)~(C)の梁に集中荷重(P)が作用した際の、スパン中央のたわみの大小関係を示した次の(1)~(4)のうち、適当なものはどれか。ただし、梁はいずれも矩形断面(高さ0.8hまたはh、幅0.8bまたはb)とし、せん断変形を考慮しない弾性体(ヤング係数0.8EまたはE)とする。なお、荷重はスパン(L)の中央に作用し、自重によるたわみは無視することとする。
正答:3
単純支持された梁のたわみは、下記公式を用いて求めます。
ここに
y : 梁中央部のたわみ (mm)
P : 荷重 (N)
L : スパン長 (mm)
E : ヤング係数
I : 断面2次モーメント (m4)
h : 矩形断面の高さ (mm)
b : 矩形断面の幅 (mm)
上式を基に問題文を確認します。
(A) ヤング係数Eが0.8倍 → たわみyが1/0.8倍=1.25倍
(B) 矩形断面の幅bが0.8倍 → 断面2次モーメントIが0.8倍 → たわみyが1/0.8倍=1.25倍
(C) 矩形断面の高さが0.8倍 → 断面2次モーメントIがが0.83倍 → たわみyが1/0.512倍=1.95倍
従って(A)=(B)<(C)となり、(3)が正答となります。
公式を暗記することで解答が可能です。
問5
水セメント比が50%のコンクリートに、中性化速度係数がコンクリートの0.5倍のポリマーセメントモルタルによる仕上げ(塗厚さ5mm)を施した。このときの仕上げ下部のコンクリート部分の中性化深さの進行予測(図中の実線)として、次の(1)~(4)のうち、適当なものはどれか。なお、ポリマーセメントモルタルの剥離はないものとし、コンクリートとポリマーセメントモルタルの中性化の進行は√t則に従うものとする。また、仕上げの無いコンクリートの中性化進行予測(図中の破線)を比較として示している。
正答:4
√t則による中性化深さの推定に関する応用問題です。
コンクリートの中性深さを評価する指標として√t則が挙げられます。
ここに、
d : 中性化深さ (mm)
α : 中性化速度係数 (mm/√年)
t : 経過年数 (年)
①問われているのは下部のコンクリートの中性化深さです。即ち、表面のポリマーセメントモルタルにおいて中性化が進行するうちは下部のコンクリートは中性化を生じません。このため、(1)は不適当です。
②(2)~(4)は下部の中性化速度の傾向、通常と同程度か、早いか、遅いかを問いています。表面処理を行うことで中性化の進行が促進されることはあり得ません。従って(3)は不適当です。
③最終判断は下部コンクリートの中性加速度が通常と同程度か、遅いかです。表層処理を行うことで下部コンクリートに供給される二酸化炭素は減少します。このため下部コンクリートの中性化の進行は通常と比較して抑制されます。即ち中性化の進行は緩やかとなるため、(4)が正答となります。
Leave a Comment