2018年問11~15【コンクリート診断士】

問11:コンクリートの収縮

 高強度コンクリートを用いた構造物の施工でひび割れが懸念されたため、同じ配(調)合のコンクリートを用いて下表の条件で長さ変化を測定したところ、下図の通りとなった。このとき、材令28日における自己収縮ひずみとして、次の(1)~(4)のうち、正しいものはどれか。

(1) εAB
(2) εB
(3) εBC
(4) εABC

正答:1

 問題はこの測定で何が得られるか、自己収縮ひずみとは何か、乾燥収縮との違いは何かを問いています。
 ・自己収縮:セメントの水和反応に伴う水分の消費による収縮
 ・乾燥収縮:内部水の蒸発による収縮
 コンクリートの収縮はこの2つによって構成されます。

 供試体Xと供試体Yの差はアルミテープとビニール袋による封かんであり、それは乾燥収縮の有無を示します(供試体Xは乾燥収縮が生じないものとする)。即ち、εCは乾燥収縮の差を示します。
 従ってεAおよびεBの和が自己収縮を示します。

問12:弾性波探査

 図に示すように、ポストテンション方式PC箱桁のウエブ表面から衝撃弾性波法によってグラウト充填状況を調査した。シース内にグラウトが充填されていない場合に得られる周波数スペクトルとして、次の(1)~(4)のうち、最も適当なものはどれか。ただし、コンクリート中の弾性波の伝搬速度は4000m/sとする。

正答:1

 弾性波による内部欠陥までの深さ算出手法を理解しているかを問う問題です。弾性波による内部欠陥までの距離は次の式によります。

 L = Vp / ( 2 × f )

  ここで
   L = 内部欠陥までの距離 or 板厚 (m) ※即ち空洞までの距離
   Vp = 弾性波速度 (m/sec)
   f = 周波数 (Hz)

 問われているのは周波数であるため、上式よりf (Hz)を求めます。
ここで、弾性波によって「シースの空洞」および「壁の向こう側の空間(絵的に板の右の空間)」が検出されます。このためそれぞれを算出します。

 ①シースの空洞
 f = Vp / ( 2 × L )
  = 4,000 / ( 2 × 0.15 )
 = 13,333 Hz = 13.3 kHz

 ②壁の向こう側の空間
 f = Vp / ( 2 × L )
  = 4,000 / ( 2 × 0.30 )
  = 6,666 Hz = 6.7 kHz

 上記より、6.7 kHz および13.3 kHzが検出されます。

 以上より(1)が正答となります。

問13:中性化(中性化深さ)

コンクリート構造物から採取したコア供試体を用いて中性化深さを測定した。JIS A 1152 : 2011(コンクリートの中性化深さの測定方法)の規定に照らして、次の(1)~(4)の記述のうち、不適当のものはどれか。

(1) 測定面にのろが付着していたため、水洗いによってこれを除去し、濡れた測定面を自然乾燥させた。
(2) 測定面が乾燥していたため、フェノールフタレイン溶液を調整する際に加えるエタノールの量を多くした。
(3) 測定面に粗骨材の粒子があったため、粒子の両端の中性化位置を結んだ直線状で測定した。
(4) コンクリート表面から赤紫色に抵触した部分までの距離を0.5mmの単位で測定した。

正答:2

 中性化に関する問題で、頻出ものです。測定面が乾燥してる際には噴霧する水の量を多くします、エタノールの量ではありません。

問14:UVスペクトル法

火災を受けたコンクリートの受熱温度を推定するための方法に関する、次の記述中の(A)~(C)に当てはまる(1)~(4)の語句の組み合わせのうち、適当なものはどれか。

UVスペクトル法は、コンクリートに使用されている( A )に着目して、分析資料の( B )と加熱温度との関係であらわされる検量線から、受円積温度を推定する方法である。検量線が作成できない場合は( C )により有機物を定量することにより、受熱温度を推定することもできる。

正答:3

 UVスペクトル法とは、分光光度計を用いてコンクリート中の化学混和剤の熱による変化を分析し、受熱温度を推定する方法です。
 検量線が作成できない際はCODによって有機物を定量します。

問15:圧縮強度試験

 コンクリート構造物からコアを採取し、圧縮強度試験を行った。JIS A 1107:2012(コンクリートからのコアの採取方法及び圧縮強度試験方法)の規定に照らして、次の(1)~(4)の記述のうち、適当なものはどれか。

(1) 粗骨材の最大寸法が20mmであったので、コア供試体の直径を65mmとした。
(2) コア供試体高さの中央付近で互いに直行する2方向について直径を測定し、その平均値を供試体の平均直径とした。
(3) コア供試体の端面とコアの軸とのなす角度が90.7°であったので、そのまま圧縮強度試験に供した。
(4) コア供試体の高さと直径との比が1.85であったので、圧縮強度の補正は行わなかった。

正答:1

コンクリートの強度試験用供試体の作り方(JIS A 1132 : 2020)の内容を問う問題です。
(1) 供試体の高さは直径の2倍以上、供試体の直径は粗骨材の最大寸法の3倍以上かつ100mm以上(標準は100mm、125mm、150mm)とされています。
(2) 直径の測定は供試体の上下端付近および中央付近で1%以内の精度で測定します。
(3) コア供試体の端面とコア軸(母線)がなす角度は90±0.5°以内とします。
(4) 供試体の直径/高さが2を下回るとき、圧縮強度が増加傾向を示します。このため供試体の直径/高さが2を下回るときには補正係数を乗じて直径/高さ比が = 2の時の圧縮強度に換算します。

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