漁港の地盤調査①

 「漁港・漁場の施設の設計参考図書2015年版」p.130では、地盤条件に関する基本として、次のように述べられています。
 ”漁港・漁場の施設の設計に用いる地盤条件は、地盤調査及び土質試験の結果をもとに、設計に必要な成層状態、土の物理的性質、力学的特性等を適切に設定するものとする。”
 上記の基本を基に(内容的には一般的なものですが)、本ページでは調査方法について述べます。

 漁港・漁場の構造物又は施設に対する地盤調査の方法については、下記4項目が明記されています。
①対象水深は0~200mの範囲にあり、多くの場合は0~50mである。この水深は、ボーリングなどによる直接地盤調査可能水深(0~30m)と、音波探査などによる間接地盤調査水深(30m以深)に分けられる。
②重力式防波堤などの重量構造物で、地盤の沈下、破壊がその構造物、及び周辺の施設に重大な影響を及ぼすものについては、直接的方法により地盤調査を行うことを原則とする。直接地盤調査法として、現地より採取した土試料の物理試験(粒度試験、土粒子の密度試験など)、及び力学試験として、砂質土地盤では標準貫入試験を、粘性土地盤では現地より乱さない土試料を採取し、一軸圧縮試験、圧密試験を基本として行う。
③比較的軽量な構造物の場合、及び対象範囲の広い構造物では、ボーリング、乱れの少ない試料採取などの点的調査方法と音波による地層探査などの線(面)的間接調査法の併用とし、これに底質の物理試験結果を加味することが望ましい。
④水深が30mを超える場合には、音響測深、音波による地層探査などの間接調査法を主体とし、これに採泥により得られた底質の物理試験結果を加味することが望ましい。

 地盤調査の方法として、「直接地盤調査方法」及び「間接地盤調査方法」が挙げられています。
 直接地盤調査方法(②より):物理試験及び力学試験
 間接地盤調査方法(③④より):地層探査、音響探査など

 私は漁港にて物理探査(地層探査、音響探査等)を行ったことがありません。③④のように底質の物理試験も同様にありません(経験不足が一因なのは言うまでもありません)。通常は標準貫入試験並行オールコアボーリングを行い、N値および各種物理試験結果を用いて設計を行います。また、粘着力cの算定のために室内試験(一軸圧縮・三軸試験)も行われます。

 注目すべき点として、②に「砂質土地盤では標準貫入試験」を「粘性土地盤では現地より乱さない土試料を採取し、一軸圧縮試験、圧密試験を基本として行う」と明記されています。実際には、費用の面からか、粘性土または砂質土を区別せず標準貫入試験を実施し、N値より強度定数を提案することが ままあります。室内試験は必須かと問われれば、やはり計画構造物等の重要度等との兼ね合いになるのでしょう。判断が分かれるところだと感じます。

 

Leave a Comment

入力エリアすべてが必須項目です。メールアドレスが公開されることはありません。

内容をご確認の上、送信してください。